| はじめに |
整形外科では年間700件余りの手術を行っています。われわれ整形外科医が担当する分野は極めて広く部位別では脊椎・四肢関節(肩、肘、手、股(こ)、膝、足など)、また疾患別では外傷(ケガ)から加齢変化に伴う変性疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、関節リウマチなどの炎症性疾患、腫瘍(できもの)、スポーツ障害など非常に多岐にわたります。また、対象となる患者様も小さいお子さんからご年配の方までと全世代にわたります。
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| 過去3年間の手術実績(表1、グラフ1) |
| 年次別に見て変性疾患はほぼ横ばいですが、外傷は増加傾向にあります。特に高齢化社会をむかえ年配の患者様の転倒に伴う骨折(大腿頚骨部・転子部骨折:股(こ)関節の付け根の骨折、檮(とう)骨遠位端骨折:手首の骨折など)の増加が目立ちます。これらの背景には骨粗鬆症が大きく関わっていると言われています。 |
| 表1:過去の手術実績(例数) |
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2005年 |
2006年 |
2007年 |
| 外傷(骨折) |
上肢の骨折 |
64 |
87 |
104 |
| 大腿骨頚部・転子部骨折 |
70 |
69 |
86 |
| 下肢の骨折 |
37 |
40 |
38 |
| 変性疾患 |
人工関節手術
(膝、股(こ)関節) |
53 |
63 |
76 |
| 肩腱板(けんばん)損傷 |
19 |
13 |
35 |
| 脊椎手術 |
54 |
67 |
75 |
| 総手術件数 |
633 |
650 |
729 |
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| グラフ1:年間手術件数(過去3年間) |
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最近のトピックス
1.最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)について |
現在、整形外科を問わず各科で最小侵襲手術(以下MIS)が盛んになってきています。MIS(エム アイ エス)とは身体組織に対する侵襲(負担)を極力少なくすることで手術後の疼痛を軽減させたり機能回復を早めたりするすることの出来る手術方法を言います。当科では下記の如くMISを積極的に行っています。
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| 低侵襲人工膝・股関節手術 |
末期の関節症(軟骨や骨が破壊されて疼痛や歩行障害が出現)に対しては痛んでいる軟骨や骨を金属で置き換える人工関節手術が行われます。従来は手術創が20cm程度と大きかったものが当科では10cm以下で出来るようになっています。これは美容整容的な見地からみても好ましいと言えます。
また、筋肉に対する侵襲も少ない分、従来法に比べて手術後の痛が少なく早期からリハビリテーションが可能で機能回復も早い傾向にあります。 |
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| 低侵襲肩関節手術 |
| 肩の筋(すじ)が切れている腱板(けんばん)損傷に対しては、従来皮膚を切開して筋肉を分けて腱板に到達して縫合する手段を取っていましたが、当科では関節鏡(関節の内視鏡)を使用して縫合術を行っています(ARCR:関節鏡視下腱板修復術)。1cm程度の手術創が数ヵ所で筋肉も裂かない為、従来よりリハビリテーションが早くなり患者様の負担は随分と軽減されています。 |
| 低侵襲脊椎手術 |
腰痛や下肢の痺れの原因となる腰椎椎間板ヘルニアの手術では神経を圧迫している椎間板の一部を摘出するために従来は皮膚、筋肉などを大きく切開していましたが、当科では内視鏡や特別な器具を用いて小さな傷で済む手術を行っています(MED:内視鏡下椎間板切除術)。また、手足が痺れたり歩行障害などの原因となる頚椎症性脊髄症(せきずいしょう)に対しては、従来頚椎を上から下まで大きく開ける手術が行われていましたが、当科では小さな切開で障害部位だけを手術する方法をとっています(skip
laminoplasty:選択的椎弓形成術)。これにより早期退院(ヘルニアの場合は一週間)、社会復帰が可能となっています。
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| 低侵襲骨折手術 |
骨折の手術ではプレート(金属の板)などを使用します。従来は骨折部を中心に大きく切開していましたが、当科では小切開によりプレートを挿入して骨折部を固定しています(MIPO:最小侵襲プレート骨接合術)。この方法には傷が小さい他に骨折部の治りが早いという利点もあります。ただ、全ての骨折に対して出来る訳ではありません。
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| 2.関節リウマチの新しい治療(抗サイトカイン治療) |
| 関節リウマチは全身の様々な関節に炎症が起き、痛みと腫れを引き起こします。また、関節破壊は発症早期から始まり、継続的に進行していきます。治療が遅れるほど日常生活の動作の障害になります。関節リウマチの治療は関節破壊を止め、日常生活を維持し、患者さんだけでなく周囲の方々の負担を減らすことと言われています。これからの目標を達成するために、早期から強力な治療を行うことが必要であることがわかってきました。抗サイトカイン薬(レミケード、エンブレル、アクテムラ)による治療は関節の痛みや腫れを強力に抑えるとともに、新たに発生する関節破壊を予防します。さらに完全寛解(リウマチが完全に治る)の道も開けてきています。当科ではリウマチ専門医による抗サイトカイン治療を積極的に行っています。 |
| おわりに |
整形外科医は運動器の病気やケガを治療し、健康を守る専門家です。運動器とは骨、関節、靭帯(じんたい)、筋肉、脊椎脊髄、手足の神経などをひとまとめにした呼び方です。われわれは常に最新の医学を取り入れ、質の高い医療を患者様に提供するよう努めています。手、足や背骨などの身体に痛みがある場合やケガをした時には、早い機会に、整形外科医の正しい診察と治療を受けましょう。
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