精神科

診療科紹介

精神科
はじめに

 砂川市立病院精神科は、外来、入院の日常診療はもちろんのこと、総合病院・中空知地域のセンター病院の精神科として、他の医療機関では対応が難しい各種精神疾患の救急・急性期医療、院内の各診療科と連携した心身両面の専門的な治療、高度な認知症診療なども担い、これらの治療を必要とする患者さんを積極的に受け入れてきました。
 令和5(2023)年4月より、病院の看護師等職員の不足の影響により精神科病床が再編され、これまでの2病棟80床から、1病棟40床となりました。病床数は半減となりましたが、今後もこれらの総合病院・センター病院の精神科としての機能は維持し、当地域で期待される役割を変わらず果たしてまいります。そのため、当科への入院を必要とする方が円滑・確実に入院できるよう、入院だけでなく外来診療も含めて体制を変更し、できるだけ入院に頼らない医療を提供するとともに、入院においても初めから退院方針を視野に入れ、できるだけ短期間で退院、転院に漕ぎつけるように支援・調整を行うなど順次取り組みを進めているところです。具体的には外来患者さんができるだけ入院せず地域で暮らし続けていくためのリハビリテーション、生活支援や訪問看護の推進、院内の多職種医療チームの活動強化、退院・転院の受け皿となる他の医療機関や施設などとの連携の促進などにこれまで以上に力を入れてまいります。
 今後も多くの患者さんを迅速に受け入れていくため、軽症の方、状態が長期安定している方など総合病院での専門的治療を要しない患者さんに関しては、他の医療機関やかかりつけ医に以後の治療をお願いし、地域医療の役割分担を進める必要があります。急速な過疎化・高齢化が進む中、地域医療は今大きな変革期にあり、精神科もその例外ではありません。今後も地域医療を守り、また当科に期待される使命を果たし続けていくため、当科を利用される患者さん、地域住民の皆さまにおかれましては、何とぞご理解、ご協力のほど、お願いいたします。


当科の概要と治療について

 精神科医師は常勤5名(うち精神保健指定医3名・精神科指導医2名)、非常勤1名(令和5年4月現在)です。医師とともに看護師・理学療法士・作業療法士・精神保健福祉士・公認心理師・病棟薬剤師が互いの専門性を尊重しながら密に連携し、多職種が協働しての高度なチーム医療を行っているのが当科の大きな特徴であり、強みです。
 当院は医療観察法指定通院医療機関となっており、地域の精神科救急システムの輪番病院としても機能しています。当科の医師はもちろん治療に当たる全てのスタッフは日々研鑽し、カンファレンスなどで議論を重ねながら、多種多様な背景、症状の患者さん個々に合わせた最新・最良の医療を提供し、対応力を高められるよう努力しています。また当院は精神科卒後臨床研修病院でもあり、若手医師を指導医を中心に多職種で教育し、多くの経験と知識を身につけ幅広い視野を持った医師に育てられるよう努めております。

 精神科の治療は大きく分類して薬物療法・精神療法・リハビリテーションの3本柱で構成されており、それぞれの患者さんの疾患や病状などに応じて、これらを適宜組み合わせて最善と考える治療を提案、提供しています。

薬物療法

 精神科領域では近年、有効性と安全性のバランスのよい新薬が次々と発売されており、当院においても積極的にこれらの新薬を採用して治療にあたっています。身体疾患を合併した患者さんや身体の機能が低下した高齢の患者さんに対しても、必要に応じて他の診療科の医師の協力も仰ぎながらできるだけ安全に薬物療法を行えるよう努めております。多くの薬が処方され、それらをのむことで体に害が生じたり、薬ののみ合わせの問題が生じたりすることが高齢者を中心に最近増えており(ポリファーマシー)、不要な薬を整理する取り組みも進めています。

精神療法

 外来、病棟において医師が診察時にお話をうかがい精神療法を行う他、医師が必要と判断した患者さんに対しては、公認心理師がより専門的なカウンセリングを行います。患者さんやご家族に病気に関する知識や病状悪化時などの対処法などを身につけていただく心理教育も適宜行います。

リハビリテーションと支援

 リハビリテーションには、個人や集団でさまざまな作業や活動をしていただき、楽しみながら活動性を高め、心と体の回復を援助する作業療法(OT)、高齢者など筋力や身体機能の低下した患者さんの機能の回復、維持を目指す理学療法(PT)などがあります。最近は認知症の入院患者さんへの作業療法に特に力を入れており、季節に応じたプログラム(クリスマス会など)も積極的に企画、実施しています。
 当科の病床数が減ったため、外来患者さんに対しては、できるだけ入院することなく地域で暮らし続けられるよう、精神保健福祉士や看護師、公認心理士などが必要に応じて地域の社会資源や支援者とも連携しながら、自宅への訪問も含めた日常生活のこまめな見守りや指導、生活能力や病気への対応力を高めるための取り組みなどをこれまで以上に力を入れて行ってまいります。

その他の治療

 重症あるいは薬が効きにくいうつ病や統合失調症、レビー小体型認知症などの方に対し、修正型電気けいれん療法を行っています。当院では、手術室で麻酔科医による全身管理のもと、けいれんを誘発しない、より安全に行う方法を取り入れ、多くの方で迅速かつ優れた効果を上げています。 

もの忘れ専門外来による治療と認知症疾患医療センターの運用

 平成16年1月より当科・脳神経内科・脳神経外科の3科が協働診療による「もの忘れ専門外来」を開設し、かかりつけ医からの紹介を受け、当院にて詳細な診察と心理検査・脳CT/MRI・脳血流SPECTなどの精密検査を行い確定診断後、かかりつけ医でフォローしていただく医療連携を図っています。かつケアマネージャーを中心として介護関係者とも随時話し合いの機会を持ち対応を協議する他、患者さんの入院時、入院療養中、退院時に情報共有を行い、退院後のスムーズなサービス利用や適切な介護の提供につながるよう努めています。

 認知症疾患医療センターは平成24年に道より指定を受け、年約500~600名の初診患者の診断と初期治療、身体合併症を有する方や症状が悪化した方の入院受け入れも行っております。また、認知症相談担当者を専従で配置し、医療・介護関係機関と密に連携するとともに、住民や専門職向けに認知症に関する普及啓発のための研修会なども行っております。

多職種による支援・チーム活動
退院支援

 精神保健福祉士を中心として、入院患者さんの退院支援を行っています。入院時から退院方針を視野に入れながら、患者さん、ご家族と病院の関係職種・介護・福祉等の関係者が集まって適宜話し合いを重ね方針を共有していき、また退院前、退院後には作業療法士・病棟看護師らとも共同で訪問を行い、早期にスムーズな退院移行ができるよう支援しています。

認知症初期集中支援チーム

 平成27年1月に国の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に掲げられた「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」を実現するために、専門のチームが誕生しました。専門チーム員が家族や周囲の人からの訴えや相談を受けて、認知症が疑われる方の家庭を訪問し、医療や介護サービスにつなぐための支援を行っています。当院の認知症疾患医療センターは砂川市のチームと周辺自治体で構成される空知中部広域連合のチームに参画し、定期的な関係者会議の開催の他、こまめに相談しながらよりよい支援を行えるよう努めております。

精神リエゾンチーム

 身体疾患の治療のため当院の一般病棟・救命救急センターに入院している患者さんに生じた精神的な問題の早期把握と症状の緩和、早期回復のための精神科専門医療の提供を行い、身体疾患の治療ができるだけ支障なく継続できるよう、身体治療を行う主治医と連携(リエゾン・コンサルテーション)しながら支援に当たるチームです。チームは精神科医師・専門知識を持つ看護師・精神保健福祉士・薬剤師・公認心理師等で構成され、対象患者さんの往診、治療方針の策定、主治医や入院病棟スタッフへの助言や指示を行います。チームスタッフは毎週カンファレンスで議論し、よりよい治療やケアを提供できるよう努めています。相談される精神症状としては高齢や認知症を背景としたせん妄が圧倒的に多く、不眠や興奮などにより身体治療に支障を来し患者さんや病棟スタッフへの負担も大きいため、せん妄を予防、軽症化するためのより早期からの介入の試みや、せん妄予防のための院内医療スタッフへの啓発・教育も進めています。

認知症・せん妄ケアチーム

 同じく一般病棟等に入院中で、認知症やせん妄による行動・心理症状や意思疎通の困難さがみられ、身体疾患の治療への影響が見込まれる患者さんに対し、専従看護師を中心に、医師、公認心理師、精神保健福祉士、作業療法士、薬剤師など多職種が入院病棟の看護師と協力しながら適切に対応することで、症状の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられるよう支援を行っております。毎週カンファレンスや対象患者さんの往診を行う他、入院病棟看護師への助言、さらには必要に応じ精神科リエゾンチームや緩和ケアチームなど他の多職種医療チームとも情報共有しながら、一人ひとりの患者さんにとって最善のケアが行われるよう心がけています。

手術実績
術式 R2 R3
電気痙攣療法
閉鎖循環式全身麻酔による
241 160
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